【電気の量を測る】電圧、電流、抵抗の単位を知ろう!
電子工作の世界では、さまざまな部品を組み合わせて、電気の力を借りてうまいこと動作させます。でも、電気って目に見えないし、手で触れることもできないから、ちょっと不思議じゃないですか?
前回の記事では、「回路」が電気の通り道であること、そしてその中を流れる電気の「力(電圧)」「量(電流)」「流れにくさ(抵抗)」という三つの基本的な性質について学びました。今回は、その「力」や「量」、「流れにくさ」を具体的にどうやって表すのか?つまり「単位(たんい)」に焦点を当てて、もっと詳しく掘り下げていきます。
「単位」と聞くと、学生時代の理科や数学を思い出して「うっ…」となる人もいるかもしれません。でも安心してください。電子工作で使う単位は、実はとてもシンプルで、一度覚えてしまえば一生モノの知識になります。
単位を理解することは、料理でたとえば大さじ一杯のように、調味料の分量を正確に測るようなものです。正しい分量を理解しないと、味が決まらないのと同じように、電気の単位を理解しないと、部品が正常に動かなかったり、最悪の場合は壊れてしまったりすることもあります。だからこそ、この「単位」が非常に重要になるわけです。
電圧・電流・抵抗の単位を正しく理解できる。
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1. 電圧の単位:ボルト (V)
まずは、電気を「押しだす力」を表す電圧の単位から見ていきましょう。
電圧の基本単位「ボルト (V)」
電圧の単位は、イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタにちなんで名付けられた「ボルト(Volt)」です。記号は「V」を使います。
私たちの身の回りには、さまざまな電圧の電気が存在しています。電気が流れていると言っても、電圧の幅はとても広いです。一例として3種類の電圧についてご紹介します。
- 乾電池: 私たちにとって最も身近な電圧源は乾電池だとおもいます。アルカリの単三電池や、単四電池など機器なじみがありますよね。コンビニでも家電量販店でも、どこでも手に入る入手性の良さも特徴的です。

- 家庭用コンセント: 家の壁にあるコンセントからは、日本の場合は100Vの交流電圧が供給されています(。海外では200Vや240Vの国もあります。豆知識ですが、直流・交流の違いがあるので、実は乾電池をいっぱいつなげて電圧を上げただけだと、家庭用コンセントの代わりはできません。

- USB電源: スマートフォンやタブレットの充電によく使うUSBポートからは、基本的に5Vの直流電圧が供給されています。電子工作では、Arduinoなどのマイコンボードの電源として非常によく利用されます。いつものUSBの口から出てくるのは全世界共通で5Vです。規格が統一されている便利さを感じますね。

このケーブルは、USBコネクタから5Vの電源を引っ張るために作った自作品です。USB電源が安定しているからこそ、ケーブルだけちょこっと改造するだけで使えるようになります。
このように、「V(ボルト)」は電気を押し出す「力」の大きさを表し、この数値が大きいほど、より強い力で電気を押し出している、ということになります。イメージしていただければすぐわかりますが、弱い力を使って駆動する設計のものに、強い力を加えると壊れてしまいます。ですから、電圧が一致しないと製品が壊れてしまいますので注意が必要です。
電圧の大きな単位:キロボルト (kV)
電子工作ではあまり見かけませんが、電圧にはさらに大きな単位があります。それが「キロボルト(kilovolt)」です。キロは体重でお馴染みでしょう。キログラムをkgと書くように、キロボルトもkVと書きます。
- 1キロボルト (kV) = 1,000ボルト (V)
「キロ」という言葉は、距離の「キロメートル(km)」や重さの「キログラム(kg)」と同じで、「1000倍」という意味です。この1000倍だったらkを付ける。という考えはよく出てくる考え方です。
例えば、発電所から送られてくる高圧送電線などでは、数十万ボルトという非常に高い電圧が使われていますが、それを「275kV(27万5000ボルト)」のように表記します。これは、とてつもない電位差、つまり電気を押し出す非常に大きな力があることを示しています。電子工作でこれほどの電圧を扱うことはまずありませんが、豆知識として覚えておくと良いでしょう。
電圧の小さな単位:ミリボルト (mV)
逆に、非常に小さな電圧を表すときは「ミリボルト(millivolt)」という単位を使います。ミリは、長さで馴染みがありますね。ミリメータをmmと書くように、ミリボルトもmVと書きます。
- 1ミリボルト (mV) = 0.001ボルト (V)
- つまり、1V = 1,000mV
「ミリ」という言葉は、「1000分の1」という意味です。「キロ」が1000倍でしたから、ミリはその逆と覚えておけばいいでしょう。
ミリボルトが登場する場面をご紹介しましょう。センサーからの非常に微弱な信号や、精密な測定を行う場合など、電子工作の中でも特に繊細な部分を扱うときにミリボルトの単位が登場することがあります。例えば、温度センサーや湿度センサーが出力する微細な電圧変化を読み取る際などに使われることがあります。
まとめ:電圧の単位
| 単位記号 | 読み方 | 意味 | 例 |
| V | ボルト | 基本単位 | 乾電池 (1.5V)、USB電源 (5V)、家庭用コンセント (100V) |
| kV | キロボルト | 1,000V | 高圧送電線 (例: 275kV) |
| mV | ミリボルト | 0.001V | 微弱なセンサー信号 (例: 50mV) |
このように、電圧はボルト(V)を基準に、状況に応じて「k:キロ(1000倍)」や「m:ミリ(1/1000倍)」といった接頭語(その名の通り頭に付ける文字)で表現します。これらの単位を使いこなせると、様々な電圧の回路を理解しやすくなります。
2. 電流の単位:アンペア (A)
次に、回路の中を実際に「流れる電気の量」を表す電流の単位について見ていきましょう。
電流の基本単位「アンペア (A)」
電流の単位は、フランスの物理学者アンドレ=マリー・アンペールにちなんで名付けられた「アンペア(Ampere)」です。記号は「A」を使います。
アンペアは、1秒間にどれだけの量の電気が流れたかを示す単位です。言い換えると単位時間あたりに流れた電気の量とも言えます。アンペアの数値が大きいほど、たくさんの電気が流れている、つまり「電気の流量が多い」ということを意味します。
水道の例で言えば、蛇口から出る「水の量」に相当します。
- 水道で、蛇口を全開にしたときに出てくる水の量と、半分しか開かないときで水の出てくる量は異なりますよね。蛇口の開き具合は、回路の中身に依存しますが、その結果として流れる水(電気)が、水量(電流値)ということになります。
日常生活で扱う機器の消費電流は、例えば以下のようになります。
- 一般的なノートパソコン: 動作時に数アンペア(A)
- スマートフォンの充電器: 出力は数アンペア(A)
- 大型家電(エアコンやIHクッキングヒーターなど): 10アンペア(A)を超えることも珍しくありません。
このように、アンペア(A)という単位は、比較的大きな電流を表すときに使われることが多いです。では、ノートパソコンもスマートフォンも数アンペアなら、消費する電力も同じなのかな?と思うかもしれません。じつは、これは一緒にはなりません。なぜなら消費電力は電流のみで決まらないからです。のちほど解説しますので、知識として覚えておくと役に立ちます。
電流の小さな単位:ミリアンペア (mA)
電子工作の世界では、アンペアよりもさらに小さな単位が非常によく登場します。それが「ミリアンペア(milliampere)」です。
- 1ミリアンペア (mA) = 0.001アンペア (A)
- 1A = 1,000mA
電圧の「ミリボルト」と同じく、「ミリ」は「1000分の1」という意味です。電子部品の多くは、このミリアンペアの単位で電流を消費します。物によっては後述するように、「ミリ」よりも小さい「マイクロ」だったりします。
- 一般的なLED: 適切に光らせるために必要な電流は、通常数mAから20mA程度です。たったこれだけの電流で、あんなに明るく光るなんて不思議ですよね。「ライトをLEDに変えるとエコ」というのは、必要な電流が少ないことが要因です。
- 小型のモーター: 数十mAから数百mA程度の電流で動作するものが多いです。
- マイコン(Arduinoなど): 単体で動作させるには、数十mA程度の電流が必要です。単体ではこの程度ですが、マイコンに何をつなげるか?によって使う電流値は大きく変わります。
このように、私たちの作る小さな電子回路では、ミリアンペアの単位で電流を管理することがほとんどです。アンペアで表すと「0.02A」のように小数点以下が続いてしまうので、ミリアンペアを使った方が直感的で分かりやすくなります。例えば、0.002Aは2mAと表現したほうがスッキリしますし、間違いも少ないですよね。
電流のさらに小さな単位:マイクロアンペア (μA)
さらに、ごく微細な電流を表すときに使われるのが「マイクロアンペア(microampere)」です。
- 1マイクロアンペア (μA) = 0.001ミリアンペア (mA)
- 1mA = 1,000μA
- 1A = 1,000,000μA
「マイクロ」は「100万分の1」という意味です。数学的な表し方をすると、10-6と表します。m(ミリ)が10-3なので、3桁ずつ調整していると理解しやすいかもしれません。
そんな「マイクロ」は、非常に小さい量を表すときに使われます。例えば、電池で長時間動作させることを目的とした超低消費電力の回路や、非常に感度の高いセンサー(光センサーなど)では、回路がアイドル状態のときにマイクロアンペア単位の電流しか流れないことがあります。電子工作の初心者段階ではあまり意識することはないかもしれませんが、知識として知っておくと良いでしょう。
まとめ:電流の単位
| 単位記号 | 読み方 | 意味 | 例 |
| A | アンペア | 基本単位 | スマートフォンの充電器 (数A)、大型家電 (10A以上) |
| mA | ミリアンペア | 0.001A | LED (数mA〜20mA)、小型モーター (数十〜数百mA) |
| μA | マイクロアンペア | 0.001mA,0.000001A | 超低消費電力回路、高感度センサー (数μA) |
電流の単位は、部品がどれだけ電気を「ゴクゴク飲むか」というイメージで捉えると分かりやすいかもしれません。部品ごとに適切な量を把握することが、回路を安全に、そして正しく動作させるための鍵となります。
3. 抵抗の単位:オーム (Ω)
最後に、電気の流れを「邪魔する度合い」を表す抵抗の単位について見ていきましょう。
抵抗の基本単位「オーム (Ω)」
抵抗の単位は、ドイツの物理学者ゲオルク・ジーモン・オームにちなんで名付けられた「オーム(Ohm)」です。記号はギリシャ文字のオメガ「Ω」(大文字)を使います。
オームは、どれだけ電気を流れにくくするか、その度合いを表します。オームの数値が大きいほど、その部品は電気を強く邪魔し、電流を流れにくくします。
水道の例で言えば、水道管の途中に設置された「バルブ(栓)」や「水の抵抗が大きいフィルター」に相当します。水道の水圧が一定であると仮定すると次のようなことが言えます。
- バルブが少ししか開いていない状態(抵抗が大きい): 水の流れる量はチョロチョロ。
- バルブを全開にした状態(抵抗が小さい): 水の流れる量はドバドバ。
抵抗は、電子工作で最も基本的かつ重要な部品の一つです。回路に流れる電流を制限したり、電圧を調整したりするために、ほぼすべての回路で使われています。
抵抗の大きな単位:キロオーム (kΩ)
電子工作で最も頻繁に目にする抵抗の単位が、この「キロオーム(kiloohm)」です。
- 1キロオーム (kΩ) = 1,000オーム (Ω)
「キロ」は電圧や電流と同じく「1000倍」という意味ですね。実際の抵抗器には、「1kΩ」や「10kΩ」「4.7kΩ」といった形で表示されていることが非常に多いです。数Ωから数十Ωの抵抗はあまり多くなく、数十kΩ、数百kΩの抵抗のほうが一般的です。
- LEDの電流制限: LEDを光らせるための抵抗は、数百Ωから数kΩの範囲で選ばれることが多いです(例: 220Ω、330Ω、1kΩなど)。
- センサー回路: 光センサーや温度センサーなど、センサーの出力を調整する回路では、数kΩから数十kΩの抵抗がよく使われます。
- スイッチの安定化(プルアップ/プルダウン): マイコンにスイッチの状態を正確に伝えるための抵抗として、数kΩから10kΩ程度の抵抗が使われます。
このように、電子工作で部品を選ぶ際には、このキロオーム(kΩ)という単位が頭に浮かぶように慣れていくことが大切です。
抵抗のさらに大きな単位:メガオーム (MΩ)
キロオームよりも大きい、非常に大きな抵抗を表すときは、「メガオーム(megaohm)」という単位を使います。
- 1メガオーム (MΩ) = 1,000,000オーム (Ω)
- 1MΩ = 1,000kΩ
「メガ」は「100万倍」という意味です。「ミリ」や「マイクロ」とは逆に、非常に大きな値を表すときに使用します。非常に高い抵抗値を持つ部品や、ごく微弱な電流しか流したくない回路などで使われるます。例えば、高インピーダンスの入力回路や、非常にゆっくりと充放電させたいコンデンサと組み合わせる場合などです。電子工作の初心者段階ではあまり登場しませんが、回路図などで見かけることがあるかもしれません。※高インピーダンスとは、とても電気が流れにくい状態を想像してもらえればOKです。
まとめ:抵抗の単位
| 単位記号 | 読み方 | 意味 | 例 |
| Ω | オーム | 基本単位 | 数Ω〜数百Ω(小電力回路や電流制限) |
| kΩ | キロオーム | 1,000Ω | 数kΩ〜数百kΩ(LED制限、センサー、プルアップ/ダウン) |
| MΩ | メガオーム | 1,000,000Ω | 高インピーダンス回路、微小電流回路 |
抵抗の単位は、部品が電気を「どれだけ通しにくいか」というイメージで捉えると良いでしょう。適切な抵抗値を選ぶことが、回路の動作を意図通りにコントロールするために不可欠です。
4. 単位の換算:接頭語を理解しよう!
これまでの解説で、電圧、電流、抵抗のそれぞれに「キロ」「ミリ」「マイクロ」「メガ」といった接頭語(プレフィックス)がつくことを見てきました。これらの接頭語は、それぞれの基本単位の大きさを表す「倍率」のようなものです。
電子工作では、異なる単位間で数値を変換する機会がよくあります。例えば、回路計算で得られた電流値がアンペア(A)なのに、使いたいLEDの定格電流がミリアンペア(mA)で書かれている、といった場合です。
よく使う接頭語と倍率
あたまに何がつくかで1000倍なのか1/1000なのか、使っていくうちになんとなくわかってきます。kとmは日常でも使いますが、Mやpなどは日常であまり登場しませんので、意識して使ってみてください。
| 接頭語 | 記号 | 倍率 | 例 |
| メガ | M | 1,000,000倍 | 1MΩ = 1,000,000Ω |
| キロ | k | 1,000倍 | 1kV = 1,000V, 1kΩ = 1,000Ω |
| (なし) | (なし) | 1倍(基本単位) | 1V, 1A, 1Ω |
| ミリ | m | 1/1,000倍 (0.001) | 1mV = 0.001V, 1mA = 0.001A |
| マイクロ | μ | 1/1,000,000倍 (0.000001) | 1μA = 0.001mA = 0.000001A |
| ナノ | n | 1/1,000,000,000倍 | 1nF = 0.001μF (コンデンサでよく使う) |
| ピコ | p | 1/1,000,000,000,000倍 | 1pF = 0.001nF (コンデンサでよく使う) |
部品の単位として使う場面としては、「ナノ」や「ピコ」は主にコンデンサの容量を表す際に頻繁に使われますが、その他は小さくても「ミリ」程度で済むことがほとんどです。
単位換算のコツ:1000倍か1000分の1かを意識する
単位換算で迷ったときは、「大きな単位から小さな単位へは数字を大きくする(×1000)、小さな単位から大きな単位へは数字を小さくする(÷1000)」という基本を思い出しましょう。ここで具体例を4つご紹介しておきます。
- 例1: アンペアからミリアンペアへ
- 0.02A を mA に変換したい。
- A(大きい)から mA(小さい)へなので、数字を大きくする(×1000)。
- 0.02 A × 1000 = 20 mA
- 例2: キロオームからオームへ
- 4.7kΩ を Ω に変換したい。
- kΩ(大きい)から Ω(小さい)へなので、数字を大きくする(×1000)。
- 4.7 kΩ × 1000 = 4700 Ω
- 例3: ミリアンペアからアンペアへ
- 500mA を A に変換したい。
- mA(小さい)から A(大きい)へなので、数字を小さくする(÷1000)。
- 500 mA ÷ 1000 = 0.5 A
- 例4: オームからキロオームへ
- 220Ω を kΩ に変換したい。
- Ω(小さい)から kΩ(大きい)へなので、数字を小さくする(÷1000)。
- 220 Ω ÷ 1000 = 0.22 kΩ
このように、単位の換算は基本的な算数です。焦らずゆっくり練習すれば必ずできるようになります。実際に電子部品を使う際に、データシートに記載されている単位と自分の計算で出てきた単位を合わせるために、この換算が役立ちます。ここの演算をミスしてしまうと、思わぬトラブルになることもありますので、マスターしてからも、常に注意深く確認が必要な項目です。kというたった1文字で回路が壊れることもあり得る話ですので…
5. テスターで実際に測ってみよう!
単位を理解したら、次は実際にそれらを測ってみましょう。ここで活躍するのが、電子工作の必須アイテムの一つ「テスター」です。テスターは、電圧、電流、抵抗といった電気の様々な量を測定できる便利な道具です。デジタル表示されるものが主流で、初心者でも比較的簡単に使えます。
電圧の測定方法
- テスターの設定: テスターを「電圧(V)」測定モードに設定します。直流電圧(DCV)と交流電圧(ACV)があるので、乾電池やUSB電源などの直流を測る場合はDCVを選びましょう。
- テスター端子の接続: テスターには赤と黒の2本の端子(プローブ)があります。黒い端子を「COM(コモン)」または「GND」と書かれた穴に挿し、赤い端子を「VΩmA」または「V」と書かれた穴に挿します。
- 回路への接続: 測定したい回路に対して「並列」に接続します。つまり、電圧を知りたい2点(例えば電池のプラスとマイナス、または部品の両端)に、テスターの先端をそれぞれ当てます。
- 表示の確認: テスターの画面に表示される数値が、その2点間の電圧(ボルト)です。
補足: 電圧を測る際は、テスターの内部抵抗が非常に大きいため、回路にほとんど影響を与えません。比較的安全に測定できる項目です。回路の電源が入った状態で測定しましょう。
電流の測定方法
電流の測定は、電圧や抵抗の測定と比べて、少し注意が必要です。
- テスターの設定: テスターを「電流(AまたはmA)」測定モードに設定します。測りたい電流の大きさに応じて、mA(ミリアンペア)レンジかA(アンペア)レンジを選びましょう。
- テスター棒の接続: 黒い端子は「COM」に挿したまま、赤い端子を「mA」または「A」と書かれた穴に挿し替えます(電圧測定とは赤い棒の差し込み口が変わることが多いです)。
- 回路への接続: 測定したい回路に対して「直列」に接続します。これは、電流が流れる道筋を一度テスターで「断ち切り」、その間にテスター自身を挟み込むようなイメージです。例えば、LEDに流れる電流を測りたいなら、LEDにつながる線を一度外し、その間にテスターを直列に挟み込みます。
- 表示の確認: テスターの画面に表示される数値が、その箇所を流れる電流(アンペアまたはミリアンペア)です。
重要: 電流測定は、間違った方法で接続するとテスター内部のヒューズが飛んだり、最悪テスターや回路が壊れたりする可能性があります。電流は必ず「直列」に接続し、測定したい電流の最大値よりも高いレンジに設定することを忘れないでください。初心者の方は、電流測定より先に電圧測定や抵抗測定から慣れていくことをおすすめします。
抵抗の測定方法
- テスターの設定: テスターを「抵抗(Ω)」測定モードに設定します。
- テスター棒の接続: 黒い端子を「COM」、赤い端子を「VΩmA」または「Ω」と書かれた穴に挿します(電圧測定と同じことが多いです)。
- 部品への接続: 測定したい抵抗器(または抵抗値を知りたい部品)の両端にテスターの先端を当てます。この時、必ず回路から部品を外した状態で測ってください。回路につながったまま測ると、他の部品の影響を受けて正しい値が出ません。
- 表示の確認: テスターの画面に表示される数値が、その部品の抵抗値(オーム、キロオーム、メガオームなど)です。
補足: 抵抗を測る際、テスターの先をを直接触ったり、測定している抵抗器の金属部分を指で触ったりすると、体(人体も抵抗を持っています)の抵抗値が加わってしまい、正しい値が出ないことがあります。測定中は、テスター棒のプラスチック部分を持つようにしましょう。
6. 単位を理解することの重要性:なぜ単位を知るべきか?
ここまで、電圧、電流、抵抗のそれぞれの単位と、その測定方法について見てきました。しかし、なぜこれほどまでに単位を理解することが重要なのでしょうか?
1. 部品の保護と安全性の確保
最も重要な理由は、電子部品を壊さずに安全に回路を組むためです。
- 例えば、LEDは20mA以上の電流を流すと壊れてしまう可能性があります。もし、必要な電流が20mAなのに、計算を間違えて100mA流してしまったら、LEDは一瞬で焼き切れてしまいます。
- また、部品にはそれぞれ「最大定格電圧」や「最大定格電流」という、これ以上電圧をかけたり電流を流したりすると壊れてしまうという限界値があります。これらの限界値を理解し、単位を使って適切な値を計算することで、部品の寿命を延ばし、無駄な出費を抑えることができます。
そして何より、電流や電圧の単位を理解していれば、どのくらいの電気量が危険なのか、という感覚が身につきます。高電圧や大電流は人体にとっても危険な場合がありますから、単位の知識は自分の身を守るためにも不可欠です。
2. 回路の設計と動作の予測
単位を理解することで、回路がどのように動作するのかを予測できるようになります。
- 「この抵抗を使えば、LEDはこれくらいの明るさで光るだろう」
- 「このモーターは、この電池だと何時間くらい動くだろう」
- 「このセンサーは、この電圧で使うのが最適だろう」
といったことを、実際に部品を繋ぐ前に、頭の中でシミュレーションしたり、簡単な計算で予測したりできるようになります。これは、トラブルシューティングの際にも非常に役立ちます。例えば、「LEDが光らない」という時、電圧は来ているか(V)、電流は流れているか(A)、抵抗値は適切か(Ω)といった観点で問題を切り分けられるようになります。
3. 情報の共有と理解
電子工作に関する情報は、インターネット上や書籍でたくさん公開されています。それらの情報には必ず電圧、電流、抵抗の単位が使われています。
- 海外の回路図やデータシートを読むとき
- 他の人が作った回路の解説を読むとき
- 自分の作った回路について質問するとき
単位を理解していれば、これらの情報がスムーズに頭に入ってきますし、自分の考えや質問も正確に伝えることができるようになります。これは、電子工作の世界でのコミュニケーションを円滑にするために非常に重要です。
まとめ:単位は電子工作の「共通言語」
今回の記事では、電子工作の「三本柱」である電圧(ボルト:V)、電流(アンペア:A)、抵抗(オーム:Ω)のそれぞれの単位と、その大きな単位・小さな単位の表現方法、そして単位換算のコツについて詳しく解説しました。
それぞれの単位と、身近な例について詳しく解説してみました。基本の単位は表にまとめてみるとこうなります。
| 電気の性質 | 単位の基本記号 | 読み方 | 関連する身近な例 |
| 電圧 | V | ボルト | 水道管の「水圧」 |
| 電流 | A | アンペア | 水道から出る「水の量」 |
| 抵抗 | Ω | オーム | 水道管の「バルブ」や「細さ」 |
また、この基本単位の頭につける接頭語は、表にすることこうなります。
| 接頭語 | 記号 | 倍率 | 例 |
| メガ | M | 1,000,000倍 | 1MΩ = 1,000,000Ω |
| キロ | k | 1,000倍 | 1kV = 1,000V, 1kΩ = 1,000Ω |
| (なし) | (なし) | 1倍(基本単位) | 1V, 1A, 1Ω |
| ミリ | m | 1/1,000倍 (0.001) | 1mV = 0.001V, 1mA = 0.001A |
| マイクロ | μ | 1/1,000,000倍 (0.000001) | 1μA = 0.001mA = 0.000001A |
| ナノ | n | 1/1,000,000,000倍 | 1nF = 0.001μF (コンデンサでよく使う) |
| ピコ | p | 1/1,000,000,000,000倍 | 1pF = 0.001nF (コンデンサでよく使う) |
これらの単位は、単なる記号や数字の羅列ではありません。それぞれの単位が、電気の目に見えない性質を私たちに教えてくれる「共通言語」のようなものです。単位を理解し、適切に使いこなせるようになることで、あなたは電子工作の世界をより深く、より安全に楽しむことができるようになります。
接頭語に関しては、すぐに使う機会がないかもしれません。ピコなんてコンデンサくらいでしか使わないです。抵抗は基本単位のΩかkΩやMΩが普通ですので、値が30pΩなんてまあ使いませんね…。ですから、今すぐ使わなくてもこんな単位あるんだ。程度で知識として持っておくといいかもしれません。
最初は覚えることが多いと感じるかもしれませんが、ご安心ください。実際に手を動かして回路を組んでいくうちに、これらの単位や概念は自然と身についてきます。テスターを使って実際に電圧や電流、抵抗を測ってみる経験は、教科書で学ぶよりもはるかに強い印象として残るはずです。
次回は、電子工作で最も頻繁に使う部品の一つである「抵抗器」について、さらに詳しく掘り下げていきます。抵抗器がどんな見た目をしていて、どうやってその抵抗値(Ω)を読み取るのか、そして具体的にどんな場面で使われるのかを学びます。今回学んだ単位の知識が、次回の抵抗器の理解にきっと役立つでしょう。





