今回の記事は、PLCをはじめとするDC24Vを出力するデバイスについてのお話です。24VをON/OFFすることで制御機器をコントロールするのが、工場や生産現場では一般的です。その24Vの制御の方法ですが、オープンコレクタ方式の出力と、単純に24Vや5Vを出力するもののどちらも存在します。
24Vや5Vを制御側から出力するのは分かりやすいですが、オープンコレクタ出力は理解しているでしょうか?電気の信号制御に慣れている人には簡単かもしれませんが、初心者の人はつまづくポイントになると思います。
オープンコレクタ出力ってなんだっけ?となったらこちらの記事をまずはご覧ください。
今回JLCPCBでオープンコレクタ出力を24V出力(PNP出力)に変換する基板を作成しました。動作原理についても紹介します。ただし、題名にある通り、回路設計をミスっています。どんなミスをしたのか?このミスを修正する方法も合わせて解説してみます。
実際に使用したのは、Pch MOSFETです。 今回の基板のポイントは、スイッチングの方式の変換です。つまり、具体的に表現するとこうなります。
- 出力側:NPN(シンク)動作しかできないオープンコレクタ出力
- 外部機器側(入力側):+24VでONになる
という場合でも、思い通り外部機器をON/OFFするのがやりたいことです。
つまり、なんとかしてオープンコレクタ出力を24V出力に変換する「インターフェース回路」です。
オープンコレクタ出力を+24V出力にする基板について理解できる。
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24Vを制御する方法とオープンコレクタ出力
工場の制御盤や、PLCを使う場合、標準となるのがDC24Vです。このDC24Vを使うことで、機器をON/OFF制御するのですが、実は使用する機器によってバラバラなことがあります。
一般的な感覚として、24Vを装置に入れたらON。というのは何となくわかると思うのですが、この24Vを装置に入れる方法が2つあります。
それが、PNP(ソース)出力と、NPN(シンク)出力です。それぞれの出力は、以下の特徴があります。
- PNP(ソース)出力:+24V を出す
- NPN(シンク)出力:GND に落とす
NPN出力では、機器に24Vが接続された状態で、GND側を制御します。機器に24Vが接続されていても、出口に当たる端子がGNDに落ちていなかったら、機器に24Vがかからない。という思想です。
後ほど登場しますが、オープンコレクタ出力はNPN(シンク)出力の一種で、役割としては、“GNDに落とす”ことしかできません。つまり、オープンコレクタ出力だけでは、+24V入力を必要とする機器を直接ONにすることはできません。
今回実現しようとしたこと:NPN(シンク)→PNP(ソース変換)
先ほど、オープンコレクタ出力の内容について触れましたが、ポイントは、”オープンコレクタ出力だと、+24V入力を必要とする機器を、直接ONにすることができない“こと。
一方、PNP(ソース)出力は、+24Vを出力します。ですから、オープンコレクタ出力を、PNP出力に変換することができれば、+24Vを必要とする機器を制御できることがわかります。
前置きがかなり長くなりましたが、今回はオープンコレクタ出力を、PNP出力にする変換基板を作った話です。

手元で使うために、XHコネクタを採用したのですが、コネクタをもっと小型のものにできれば、大きさを軽く半分くらいにできそうですね。
回路の基本構成(※これだとMOSFETが壊れます)
回路の中心となるのは Pch MOSFET を使ったハイサイドスイッチです。ハイサイドスイッチとは、負荷の上側をスイッチする方式です。今回は、outputの上側にいますから、ハイサイドスイッチというわけです。逆に負荷の下側をスイッチするのはローサイドスイッチです。
今回は、ソースを +24V、ドレインを出力側に接続し、ゲートをオープンコレクタで制御します。PchMOSFETのゲートに+24Vがかかっている時はOuputには何も出ず、ゲートがGNDに落ちると、Outputから+24Vが出てくる仕組みです。

回路の中身としては、PchMOSFET1個、ショットキーバリアダイオード1個、抵抗4個とかなりシンプルな構成です。構成がシンプルだったため、今回の基板はかなりコンパクトにできました。先ほどコネクタの話をしましたが、コネクタをXHよりも小さいものを採用すれば、相当小さく収めることができます。
基本的な接続
- ソース: +24V
- ドレイン: 出力。今回は+24Vが出る。
- ゲート: オープンコレクタでGND に引き下げることで、PchMOSFETがONになる。
- ゲート抵抗: +24V へプルアップ
この構成により、
- オープンコレクタOFF(ハイインピーダンス)→ゲートに+24V印加→ゲート・ソース間の電圧がほぼ0V→MOSFET OFF→ 出力は開放(0V)
- オープンコレクタON(GNDに落とす)→ゲートが0V→ゲート・ソース間電圧が24V→MOSFET ON→出力は+24Vを供給
という動作になります。これはまさに、PNP 出力と同じ動作です。
回路のどこがおかしいのか?→$V_{GS}$の絶対定格を超える。
コンセプトとしては良かったのですが、この回路では、PchMOSFETの絶対定格$V_{GS}$を超えるため、破損する可能性が高いです。もしかしたら動くかもしれませんが、使用できるレベルではありません。
$V_{GS}$とは、MOSFETのゲート端子とソース端子の電位差のことです。今回使用しているPchMOSFETを使って解説すると、回路図上、左の端子と、上の端子の電位差のことです。

回路上GateとSource間の電位差が最大24Vになります。具体的には、Trigの電位が0VでGNDに落とした場合、Gateは0Vで、Sourceは+24Vが入っていますので、GateとSource間で24Vの差が出ます。使用しているMOSFETのAO3407Aは、データシートを確認するとわかりますが±20Vまでしか対応していません。つまり24Vの電位差が出ると、定格を超えてしまい、壊れる可能性があるということです。
しかもこの定格、絶対定格ですので、この定格を超えてしまうと高い確率で壊れてしまいます。つまり、今回はこの状態では使えないということですね。
$R_1$と$R_3$でなんとか$V_{GS}$を調整できないのか?
今回の回路で修正できそうで、できないポイントが、「R1 と R3 の値をどう変えても VGS は調整できない」という事実です。
一見すると、R1(プルアップ抵抗)と R3(ゲート抵抗)が直列になっていて、24V を分圧してゲート電圧を決めているように見えます。しかし、実際の動作では分圧にはなりません。
● $R_1$と$R_3$は「直列の分圧回路」になっていない
Trig をオープンコレクタで GND に落としたとき、各接点の電位は次のようになります。

- Trig :オープンコレクタにより0V
- Gate:$R_3$を通じて0V に引き込まれる
- Source:+24V に固定
この状態では、$R_1$には 24V がかかりますが、$R_3$の両端は 0V と 0V です。つまり、$R_1$と $R_3$は直列の分圧回路として機能していません。
● $V_{GS}$を決めているのは「24V と 0V」の電位差だけ
MOSFET のゲート・ソース間電圧は次の式で決まります。
$V_{GS}=V_G-V_S$
今回の回路では、
- ゲート:Trig を GND に落とすと0V
- ソース:+24V
したがって、
$V_{GS}$=0−24=−24V
これは $R_1$や$R_3$の値に関係なく、必ず −24V になります。
つまり、抵抗値をどう変えても $V_{GS}$の最大値は変わりません。
そして、今回使用した AO3407A のゲート耐圧は ±20V のため、−24V は絶対最大定格を超えており、破損の原因になります。
● $R_3$(ゲート抵抗)は「$V_{GS}$ を調整するための抵抗ではない」
$R_3$はゲートに直列に入っていますが、その役割は次の通りです。
- ゲート容量(Ciss)を充放電するときの電流制限
- スイッチング速度の調整
- リンギング・発振・EMI の抑制
- 異常時のゲート保護(サージ電流の低減)
つまり、$R_3$はゲート電圧を決める抵抗ではありません。
ゲートは最終的に 0V に到達するため、$R_3$をどれだけ大きくしても$V_{GS}$は−24V のままです。
● $R_1$(プルアップ抵抗)も $V_{GS}$を調整しない
$R_1$の役割は、
- オープンコレクタが OFF のときにゲートを +24V に引き上げる
- ゲートの論理を確定させる
これだけです。つまり、$R_1$の値を変えても、ゲートが 0V に落ちる構造は変わらないため、$V_{GS}$ の最大値は変わりません。
● 結論:この回路では $V_{GS}$は必ず −24V になる
$R_1$と$R_3$の値をどう変えても、
$V_{GS}$= −24V という構造的な問題は解決できません。
つまり、抵抗値の調整では MOSFET の破損リスクは消えないということです。
この問題を解決するには、次の章で紹介するようにTrig 側の電圧を 0V まで落とさない工夫が必要になります。
次の章では、Trig 側に抵抗を追加して $V_{GS}$を安全な範囲に収める方法を解説します。
どうすればMOSFETを壊さずに使えるか?
それでは、回路上のPchMOSFETを壊さず回路を成り立たせる方法についてご説明します。ここまででで対策が必要なポイントは以下です。
- ゲートソース間電圧$V_{GS}$を20V以下に抑える。
簡単に思いつく対策としては、そもそもの+24Vを下げて+20V以下にする方法です。ただ、この方法では、output側も+20Vとなります。つまり、本来+24Vを出力したいのに、+20Vしか出せません。これでは本来のやりたいことができないです。
次に思いつく対策は、ゲート電圧を0Vに落とさない方法です。ゲート電圧が0Vになってしまうと、ソース電圧の+24Vの差として必ず24Vの電位差が発生します。ですから、ソース電圧はそのままに、ゲート電圧を底上げしてあげます。実は、今回の回路に1つ部品を追加するだけで実現可能です。先に対策した回路をご覧ください。

オレンジの枠で囲っていますが、対策としては、抵抗を1つ追加しています。この抵抗を加えることで、+24Vを分圧して、ゲートの電圧を下げすぎないようにしています。
回路シミュレーションの結果も載せておきます。

ご覧の通り、TrigをGNDに落とすことで、Outputに24Vが出力されているのがわかります。つまり、意図通りオープンコレクタ出力によって、+24Vを出力できています。
MOSFET の選定ポイント
24V系で使う場合、MOSFET の選定は非常に重要です。特に以下のポイントを押さえておく必要があります。今回は、PchMOSFETのAO3407Aを使用しました。
1.ドレイン・ソース間耐圧(VDSS)
24V 系では、瞬間的に 30V を超えるサージが発生することがあります。そのため、耐圧 30V の MOSFET はギリギリで、40V〜60V クラスを選ぶのが安全です。
今回使用したAO3407Aのドレイン・ソース間耐圧30Vでしたので、ギリギリです。動作自体は特に問題ないですが、安全側に振りたいのであれば、もう少し耐圧の大きいものを選定しましょう。
2. ゲート・ソース間耐圧(VGS)
ゲート・ソース間には何も対策しないと、+24V が直接かかります。今回のように、分圧するなど対策すれば、±20Vのゲート・ソース間耐圧の物でも使えます。ただしくれぐれも私みたいな失敗はしないように…
3. MOSFETが完全にONになった時の抵抗値(RDS(on)) と電流容量(ID)
PLC の入力を駆動するだけなら電流は数 mA 程度ですが、ソレノイドやリレーを直接駆動する場合は数百 mA〜数 A が必要になります。用途に応じて RDS(on) と電流容量を選定します。
今回使用したAO3407Aの電流容量は、連続電流で-4.3Aとなっています。かなり流せるように見えますが、実際には、安全に運用することを考えると、1~2A程度が目安だと考えられます。
オープンコレクタとの相性が良い理由
おさらいですが、今回使ったPchMOSFETのゲートは「GNDに落とすとON」になるため、オープンコレクタの「GND に落とす」動作と完全に一致します。
オープンコレクタの動作
- ON:GND に落とす
- OFF:開放(ハイインピーダンス)
Pch MOSFET の動作
- ゲートが 0V → ON(+24V を出力)
- ゲートが +24V → OFF
この組み合わせにより、オープンコレクタ→ PNP 出力という変換が自然に実現できます。オープンコレクタ出力をPNP出力変換したければ、PchMOSFETを使うと簡単にできる。と覚えておくといいですね。
外部機器のオープンコレクタ出力を、PLC(PNP)への入力にも使える理由
PLC の PNP入力は「+24V が来たら ON」と判断します。つまり、外部機器側は GND をコモン にして、+24V を出力する必要があります。
オープンコレクタは NPN(シンク)動作なので、そのままでは +24V を出せません。ここで Pch MOSFET を使うことで、
- オープンコレクタの GND スイッチ → PNP 的な +24V 出力
- NPN(シンク) → PNP(ソース)動作への変換
- GND コモン → +24V コモンの世界観の橋渡し
が可能になります。
この記事のまとめ:オープンコレクタ出力はPchMOSFETでPNP出力に変換可能
- PchMOSFETを使うと、オープンコレクタのGNDスイッチを+24V出力に変換できる。
- PLC の PNP 出力と同じ動作であり、24V入力の外部機器で使える。
- オープンコレクタは NPN(シンク)動作なので、PNP(ソース)動作への変換が必要。
- $V_{GS}$(ゲート・ソース間電圧)に注意。※今回私がミスっただけですが….
- 今回の基板は、24V系でオープンコレクタ出力を変換するなら、汎用性は高い。
今回は、PchMOSFETを使って、オープンコレクタ出力を変換して、+24Vを出力する(PNP出力)ことができました。基板のミスもありましたが、接続するときにケーブル側に1kΩの抵抗を足せば使えます。基板を作り直さないと使えない、ということでもなくて安心しました。
PNPとNPNで変換しなければいけないことも現場でよくあります。そんな時、この記事を思い出して基板を作ってみてはいかがでしょうか?




