電子工作やIoTの話題でよく登場するRaspberry Pi(ラズパイ)やArduino。
一方で、工場や設備の制御ではPLCが使われています。
「ラズパイでPLCの代わりができるのでは?」または逆に、「PLCやマイコンがあればラズパイは不要では?」そう思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、それぞれはまったく別物で、適材適所があります。しかも、この内容でわかりにくくなるのが、どの方法を使ってもとりあえず動作させることは可能な点です。ラズパイの代わりに普通のWindowsPCを使ってもいいですし、PLCの代わりにマイコンボードを使ってもいいのです。
本記事では、制御の知識の少ない技術者向けに、その違いを整理します。
ラズパイ、Arduino、PLCの使い分けについて理解できる。
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そもそも何が違うのか?一言で言うと

まずはざっくり整理します。
- ラズパイ:Linuxで動く小型PC
- Arduino(マイコンボード):決められた処理を正確なタイミングで繰り返す装置
- PLC:産業用途向けに「止まらない・壊れない」ことを最優先した制御装置
見た目やできることは似ていても、設計思想がまったく違います。電子工作でPLCがあまり出てこないのは、PLCが産業用途向けに開発されているためですね。
Raspberry Piは「GPIOが付いたPC」である

ラズパイはLinuxベースで動作する、れっきとしたPCです。OSが一般的に普及しているWindowsやMacとは異なるというだけで、できることは普段お使いのパソコンと似ています。
- マルチタスク
- ファイルシステム
- ネットワーク
- GUIやPython環境
が使えるのは大きな強みです。
さらに利点でもあり、ややこしい点でもあるのですが、ラズパイはPCでありながらGPIOピンを持っています。GPIOピンとは、文字通り物理的なピンで、そこの電圧をコントロールすることができます。
GPIOを使えば、
- LEDの点灯
- リレーのON/OFF
- センサ値の取得
など、電子機器を直接制御できてしまいます。このため、「電子機器を制御できるなら、マイコンやPLCと同じでは?」と感じる人が多いのも自然です。
しかし重要なのは、【GPIOが使えることと、制御に向いていることは別】という点です。
GPIOは「触れる」だけで「保証」はない

ラズパイのGPIOは、Linux上のソフトウェアから操作されます。つまり、
- 他に処理の重いアプリが動いている。
- OSの内部処理が走る。
- ネットワークやファイル処理が実行される。
といった影響を少なからず受けます。
その結果、制御と直接関係ない要因によって、
- GPIOからの出力が遅れる。
- センサーの入力を取りこぼす。
- タイミングが毎回微妙にズレる。
といったことが普通に起こりえます。困るのが、必ず発生するとも限らないところです。制御と直接関係ない要因によって発生するためですね。
LEDを光らせる程度であれば問題ありませんが、
- 決まった周期で必ず制御する
- タイミングのズレが不具合になる
といった用途では、大きな問題になります。LinuxはリアルタイムOSではないため、処理タイミングは保証されないのです。
Arduino(マイコンボード)が得意なこと

Arduinoなどのマイコンは、OSがないか非常に軽量です。
そのため、
- 処理のタイミングが予測できる
- 割り込みに即座に反応できる
- 電源ONですぐに動く
という特徴があります。
例えば、
- 一定周期で正確に信号を出す
- モーター制御を安定して行う
- センサ入力を確実に処理する
といった「時間にシビアな処理」は、ラズパイよりもはるかに得意です。
ただし、
- 電圧は3.3Vや5V
- ノイズに弱い
- 基本的に試作や組み込み用途
という制約があります。後ほどPLCの特徴についてご説明しますが、上記の弱点を補ったのがPLCです。
PLCは「産業用としての完成形」

PLCは産業用途専用に設計されています。
特徴は以下の通りです。
- 24V I/Oでノイズに強い
- 高い耐環境性(温度・振動・電気ノイズ)
- 決まった周期(スキャンタイム)で必ず実行される制御
- 長期間止まらずに動く前提
そして最も重要なのは、【止まったら困る、ではなく「止まってはいけない」世界で使われる】という点です。
そのためPLCは、
- 自由度よりも確実性
- 処理速度よりも再現性
- 開発効率よりも保守性
が重視されます。
典型的な構成例:ラズパイは「操作画面」、制御は別に任せる

ラズパイが最も力を発揮するのは、GUIで操作できる制御システムの入口として使う構成です。GUIとは、Graphical User Interfaceの略で、アプリの画面上のボタンや表示を使って、人間が操作できる仕組みのことです。
構成イメージ

[ 人 ]
↓ マウス・タッチ
[ Raspberry Pi ]
・GUI(ボタン、表示)
・処理ロジック
・通信(USB / UART / Ethernet)
↓
[ マイコン or PLC ]
・リアルタイム制御
・I/O制御(センサ、モーター、バルブなど)
ラズパイの役割

ラズパイは、人が操作する部分を担当します。
- GUIでボタンやスイッチを作る
- 状態を画面で見やすく表示する
- センサ値をグラフ化する
- ネットワーク経由でデータを送る
例えば、
- 「スタート」ボタンを押す
- 現在の状態を画面に表示する
- エラー内容を表示する
といった「人とシステムの接点」はラズパイが得意です。
制御はマイコン・PLCに任せる

一方で、
- モーター制御
- タイミング制御
- センサの確実な読み取り
- 安全に関わる処理
はマイコンやPLCに任せます。
ラズパイは、
- 「開始して」
- 「この値で動いて」
といった指示だけを送ります。
なぜこの構成が良いのか

この分離には明確なメリットがあります。
- ラズパイが止まっても制御は継続できる
- GUIの不具合が事故につながりにくい
- トラブルの切り分けがしやすい
- システムが拡張しやすい
つまり、「考える・見せるのがラズパイ。正確に動かすのがマイコンやPLC」という役割分担です。
ラズパイ単体制御との違い

ラズパイ単体でGPIOを使って、
- ボタン → GPIO ON
- リレー制御
といった構成も可能です。しかしこの方法は、
- 実験
- 学習
- 小規模な用途
には適していますが、
- リアルタイム性の不足
- 不具合の切り分けの難しさ
- 将来拡張のしにくさ
といった課題があります。つまり、先ほどの構成例のようにArduinoやPLCを使用せずとも、ラズパイ単体でも、形だけは動作可能なのです。
どう使い分けるべきか

用途別に整理すると次の通りです。
ラズパイ
- GUI
- データ処理
- 可視化
- 通信・連携
Arduino(マイコン)
- センサ制御
- モーター制御
- タイミングが重要な処理
- 組み込み用途
PLC
- 工場設備
- 安全が関わる制御
- 長期安定稼働
- 保守前提のシステム
重要なのは、何をどう制御するのか?止まったらどうなるのか?を考えることです。
今回のまとめ:適材適所が○

ラズパイ、Arduino、PLCはどれが一番優れているかの議論はできません。それぞれが、違う前提と責任のもとで設計されています。やりたいシチュエーションによって、適材適所で選択することが重要です。もちろんラズパイとArduinoを組み合わせるなど、長所で短所を補う使い方もアリです。
最も大事なのは、それぞれの特性を理解したうえで、適材適所で使用することです。
- ラズパイはGUIやデータ処理に使う。
- Arduinoは試作レベルのリアルタイム制御に使う。
- PLCは産業用の安定性を重視するリアルタイム制御に使う。




