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なぜこの電圧なのか? 1.5V、3.3V、5V、9V、12V、24Vの歴史的背景を調べてみた

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 電子工作をはじめとして、電気関係の仕事をしていると、いろいろな電圧に出会います。例えばマイコンやセンサーでは3.3V、ArduinoやUSB電源では5V、LEDテープやファンでは12V、産業機器では24V。さらに、身近な乾電池は1.5V、角形電池は9Vです。

 これらの電圧は、きれいな数学的ルールで並んでいるわけではありません。1.5、3.3、5、9、12、24。数字だけを見ると、かなりバラバラですよね。

 なんでこんなにバラバラな電圧が定着しているんだ?と思ってちょっと調べてみた結果を共有します。

1.5V:乾電池の化学が作った身近な電圧

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 もっとも身近な電圧のひとつが、単三乾電池や単四乾電池でおなじみの 1.5V です。

 1.5Vという数字は、誰かが「家庭用にはこのくらいがちょうどいい」と机の上で決めたというより、電池の化学反応から生まれた電圧です。乾電池は、液体電解質を使う湿電池に対して、ペースト状の電解質を使うことで、漏れにくく、持ち運びやすくした電池です。乾電池は1886年にCarl Gassnerがルクランシェ電池を改良して開発したもので、その乾電池が1.5Vの電圧だった。というのが始まりのようです。

 乾電池以前にも電池はありましたが、液体を使う電池は扱いが難しく、携帯機器には不便でした。乾電池は、液体がこぼれにくく、向きを選ばずに使いやすいという特徴から、携帯型の機器に適した電源になりました。乾電池が普及したことで、「小型の機器は電池で動かす」という考え方が一般的ですよね。

 現在よく使われているアルカリ電池も、公称セル電圧は1.5Vです。アルカリ電池は、亜鉛と二酸化マンガンの反応を利用する一次電池で、公称セル電圧が1.5Vとされています。

 この1.5Vという単位は、単体では低い電圧ですが、直列につなぐことで簡単に電圧を増やせます。電池2本で3V、3本で4.5V、4本で6V。昔のおもちゃや懐中電灯、ラジオ、電子工作キットなどで乾電池を複数本使うのは、この「1.5Vを積み重ねる」発想です。

5V:TTLロジックからUSBへ受け継がれた標準語

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 電子工作で最もおなじみの電圧といえば、やはり 5V です。

 5Vの背景を語るうえで欠かせないのがTTLです。TTL、つまりTransistor-Transistor Logicは、バイポーラトランジスタを使った論理回路技術です。TTL信号は5Vの電源電圧を基準としたデジタル論理信号で、1960年代にTexas Instrumentsが開発したデジタル論理回路ファミリーの名称が信号レベルの規格名として定着しました。0or1の信号をやり取りするときに、0は0Vで、1は5Vにしましょう。というところからきているということですね。

 TTLでは、5Vを電源としてデジタルのHighとLowを扱います。古いデジタル回路、コンピュータ、計測器、電子工作教材などでは、5Vロジックが長く使われてきました。そのため、5Vは「デジタル回路の標準電圧」という印象を持つ人も多いでしょう。

 さらに5Vを身近にしたのがUSBです。USB関連の資料では、USBのホスト機器が5V電源を供給します。パソコンや、USB充電器から5Vが取り出せるのは、このUSBの共通化のおかげです。

 もともとデジタルICの世界で5Vが広く使われていたところに、パソコンやUSB充電器、モバイルバッテリーから5Vが簡単に取れる時代が来ました。結果として、電子工作では5V電源が非常に扱いやすい存在になりました。

 Arduino Unoのような5V系マイコンボード、5Vリレー、5Vセンサー、5Vサーボ、LEDモジュールなど、5V周辺には多くの部品があります。これは単に5Vが便利だからというだけでなく、TTL時代からの蓄積と、USB電源の普及が重なった結果というわけですね。

 まとめると、5Vは古典的なデジタル回路であるTTLと、現代のUSB電源文化の両方を併せ持つ電圧です。電子工作の世界で5Vが強い存在感を持つのは、この2つの背景を知っておくといいかもしれません。

3.3V:半導体の低電圧化が生んだ現代的な電圧

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 電子工作で5Vの次によく出会うのが 3.3V です。ESP32、Raspberry Pi Pico、各種センサー、無線モジュールなど、最近のデバイスでは3.3V動作のものが多くあります。

 3.3Vの背景には、デジタルICの低電圧化があります。

 Analog Devicesの資料では、デジタル回路の標準的なVDDとして約20年にわたり5Vが使われたこと、バイポーラトランジスタ技術では適切な動作のために5Vが必要だったことが説明されています。その後、1980年代後半にCMOSがデジタルIC設計の標準になり、微細化や高速化、小型化、低コスト化の要求によって、最適な動作電圧は5V未満へ下がっていったと説明されています。

 ここで重要なのは、3.3Vが突然現れたわけではないということです。5Vロジックの時代があり、その後、半導体の製造技術が進化し、より低い電圧で動作するICが実用的になっていきました。電源電圧を下げることは、消費電力を抑えるうえでも有利です。

 電子工作では、この歴史の結果として「5Vの世界」と「3.3Vの世界」が混在しています。古典的なArduinoや5V対応モジュールは5V、最近のマイコンやセンサーは3.3V、というように、世代や用途によって電圧が分かれています。

 この混在が、初心者には少し厄介です。3.3V動作のマイコンに5V信号を直接入れると、部品を壊す可能性があります。特に部品選定の時に、5Vでも3.3Vでも対応しているものがあるといいのですが、そういったものが見つからない場合は、専用の電圧の部品を選ぶか、電圧を変換するモジュールを入れる必要があります。

 まとめると、これまで主流だった5Vに対して、3.3Vは、現代の半導体が低電圧・低消費電力へ進んできた結果として、電子工作でも重要になった電圧だと言えます。

9V:トランジスタラジオ時代の名残

 角形の9V電池も、電子工作では昔からおなじみです。ブレッドボードに9V電池スナップをつないで実験した経験がある人も多いのではないでしょうか。

 9V電池の歴史をたどると、トランジスタラジオの時代が見えてきます。9V電池の一般的なサイズであるPP3は、初期のトランジスタラジオ向けに導入されたものとして説明されています。また、このPP3サイズの9V電池は、煙感知器、ガス検知器、時計、おもちゃなどにも使われると紹介されています。 [en.wikipedia.org]

 PP3サイズのアルカリ9V電池は、内部に6個の1.5Vセルを入れた構造として説明されています。
つまり、9V角型電池は「1.5Vの電池を6個直列にした電池」と見ることもできます。 [en.wikipedia.org]

 9V電池の魅力は、小さな角形パッケージひとつで、比較的高めの電圧が得られることです。昔の電子工作では、9V電池から三端子レギュレータで5Vを作ってICを動かす、といった使い方もよく見られました。スナップ端子で簡単につなげることも、実験用として便利でした。

 ただし、9V電池は大電流用途にはあまり向きません。小型の電子回路や低消費電力の機器には便利ですが、モーターや大量のLEDなどを動かすには力不足になりがちです。そうなるとやはり5V1A程度流せるACアダプタなどから電源供給するのが現実的です。

 歴史的に見ると、9V電池は「小型の電子機器に、そこそこ高い電圧を手軽に供給したい」という時代の要請に応えた電池だったと言えます。今でも煙感知器や楽器用エフェクターなどで見かけるのは、その形状と電圧が特定の用途にうまくはまっているからでしょう。


12V:鉛蓄電池と自動車電装の電圧

12V
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 12Vと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、自動車のバッテリーでしょうか。トラックは24Vなので、乗用車に限りますが。

 12Vの背景には、鉛蓄電池があります。鉛蓄電池は1859年にフランスの物理学者Gaston Plantéによって発明された充電式電池であり、最初の充電可能な電池として説明されています。また、鉛蓄電池の公称セル電圧は2.1Vとされています。

 自動車用バッテリーについては、現代のSLIバッテリー、つまり始動・照明・点火用のバッテリーが鉛蓄電池であり、6個のセルを直列に接続して公称12Vシステムを構成すると説明されています。

 ここでも、電圧は「セルを直列に積み重ねた結果」として見えてきます。鉛蓄電池のセルを6個直列にすると、2.1×6でおよそ12Vとなります。実際の電圧は充電状態やエンジン作動中の充電系によって変わりますが、「12V系」という呼び方が自動車電装の標準として定着しています。

 12Vは電子工作でも登場することがあります。LEDテープ、小型ファン、ポンプ、ソレノイド、モーター、監視カメラ用電源など、5Vより少し大きな電力を扱う場面で登場します。5Vに比べて電圧が高いので、同じ電力なら電流を小さくしやすいという利点があります。

 自動車の世界で12Vが広く使われたことで、12V対応の部品や電源アダプタもたくさん流通するようになりました。その結果、電子工作でも5Vほどではないですが、12Vも使いやすい電圧になっています。

まとめると、12Vは、鉛蓄電池の発明と、自動車産業の普及によって、身近なパワー系電圧として定着した存在だと言えます。

24V:産業機器で選ばれた安全と実用の妥協点

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 電子工作ではあまり登場しませんが、工場や制御盤の世界では24Vが非常によく使われます。

 24Vは、ひとつの発明から生まれた電圧というより、PLC、センサー、リレー、制御盤などの産業制御機器の中で、低電圧で扱いやすく、かつ配線やノイズ面でも実用的な電圧として定着してきたものと考えるとわかりやすいです。

 24Vは、5Vや12Vより高い電圧のため、長い配線でも電圧降下の影響を受けにくくなります。一方で、商用電源のような高電圧に比べれば、制御回路として扱いやすい電圧です。工場ではセンサーやスイッチ、リレー、PLCのI/Oなどが広い範囲に配置されるため、ある程度の電圧の高さと扱いやすさのバランスが重要になります。

 また、産業機器では標準化が非常に重要です。センサー、PLC、リレー、電源、端子台などが同じ24V系でそろっていれば、設計も保守も簡単になります。あるメーカーのセンサーと別のメーカーのPLCを組み合わせる場合でも、24V DCを前提にしていれば接続しやすくなります。

 この意味で、24Vは「工場の共通語」のような電圧です。電子工作の机の上では5Vや3.3Vが主役でも、制御盤の中では24Vが主役になります。

 まとめると、24Vは歴史的なひとつの発明というより、産業機器の現場で安全性、配線のしやすさ、機器の互換性、標準化のバランスを取った結果として定着した電圧だと言えます。

まとめ:電圧は技術と産業の”鏡”でもある

 ここまで見てくると、電圧は単なる数字ではないことがわかります。

 1.5Vは乾電池の化学と携帯機器の歴史を背負っています。3.3Vは半導体の低電圧化と省電力化の流れから生まれました。5VはTTLロジックとUSB電源によって電子工作の標準語になりました。9Vはトランジスタラジオ時代の名残を持っています。12Vは鉛蓄電池と自動車電装の普及によって身近になりました。24Vは産業制御の現場で、安全性と実用性のバランスとして定着しました。

 つまり、よく使われる電圧には、それぞれの時代の事情を反映しています。

 もちろん、技術は今も変わり続けています。USB Power Deliveryでは5Vだけでなく、より高い電圧も扱われます。マイコンの内部電圧はさらに低くなっています。車の世界でも、電気自動車の登場で、従来の12Vとは別に高電圧系を持つ車が増えています。

 それでも、古い電圧がすぐに消えるわけではありません。部品、規格、工具、設計ノウハウ、既存設備と電圧は深く結びついているからです。一度ある分野で標準になった電圧は、その後も多くの製品や設計の前提として残り続けます。だからこそ、5Vも12Vも24Vも、今なお強い存在感を持っています。

 次に電子工作で電源を選ぶとき、電池やアダプタのラベルを見るとき、「なぜこの電圧なのだろう」と考えてみると、いつもの数字が少し違って見えるかもしれません。