今回は、電子工作するときに避けては通れない、電子回路の組み方についてご紹介します。 電子回路を実際に組んでみるとき、あなたならどうしますか?電子工作を趣味で始めたばかりなら、ブレッドボードを使う方法しか知らないかもしれません。
ただ、回路を作る方法はブレッドボードだけではありません。
今回は、電子回路を実際に組み上げるときの3パターンの方法について、メリット・デメリットを含めてご紹介していきます。どの方法もいいところ・悪いところがありますので、まずは特徴をしっかり理解して、使い分けできるようになると完璧です。
電子回路を組むときの3パターンの方法について、メリット・デメリット含めて理解できる。
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電子回路の実装は大きく分けて3パターン
まずは実装の大まかな3つの方法についてご紹介します。
- ブレッドボードに挿す
- ユニバーサル基板にはんだ付け
- 専用基板を実装
この3パターンがほぼすべての選択肢を網羅しています。ブレッドボードに挿すのと、専用基板を実装するのはイメージができても、ユニバーサル基板にはんだ付けするのはちょっとイメージが付かないかもしれませんね。
それぞれについてメリット・デメリット含めて、どんなときにその方法が適しているのか?逆にどんな時は適していないか?についても解説します。
ブレッドボードに挿す方法
ブレッドボードに挿して電子回路を組むのは、最近の電子工作では主流です。ブレッドボードとはこんな穴の開いた板です。ブレッドボードとは、英語で書くとbreadboardとなり、パンをこねたり切ったりするときの木やプラスチックの板のようなのですが、今回は電子工作なのでそれとは別物です。

ブレッドボードの最大の特徴でありメリットは、配線を省略して簡単に接続できるところです。
ブレッドボードの仕組みですが、裏側を見てもらえればわかる通り、横と縦でショートバーによって導通しています。つまり、通常の配線の場合線同士を端子台でもなんでもいいのですが、物理的に接続する必要があります。ブレッドボードは、小さい端子代が無数に内蔵されている。といえば理解しやすいかもしれません。

また、ブレッドボードの穴には、ジャンパーワイヤーと呼ばれる線を抜き差しして配線することになります。はんだで固定してしまうやり方とちがって、やり直しや組み換えもカンタンです。
ブレッドボードを使うメリット
ブレッドボードを使って電子回路を組みメリットは、以下の3つです。
- 汎用性が高く、ピッチが合えばすぐに使えることが多い。
- 配線の組み換えがすぐにできる。
- ブレッドボードは何回でも再利用可能。
汎用性が高く、ピッチが合えばすぐに使えることが多い。
一つ目のメリットは、汎用性の高さです。ブレッドボードには無数の穴が開いていますが、これらの穴のピッチ、つまり穴と穴の感覚は、2.54mmと決まっています。
2.54mmというのはかなり共通化されており、このピッチのICはすぐ見つかります。スルーホールの条件で型式で調べてもらうと足の間隔は、大抵2.54mmです。
配線の組み換えがすぐにできる。
ブレッドボードで接続するときは、ジャンパーワイヤーで接続します。このジャンパーワイヤーは、抜き差しが簡単にできます。工具も不要です。
工具不要で配線のやり直しが簡単にできるので、ちょっと付け替えて挙動の変化を確認するのにも適しています。
ブレッドボードは何回でも再利用可能。
工具不要で配線のやり直しが効くので、当然ブレッドボードは何度でも使えます。機構は単純なので数十回抜き差ししたところでびくともしません。
ブレッドボードを使うデメリット
ブレッドボードを使って電子回路を組むデメリットは、以下の3つ。
- 使いたい部品のピッチが合わないと使いにくい。
- 回路全体のサイズの最適化が難しい。
- 衝撃や振動に弱い。
使いたい部品のピッチが合わないと使いにくい
先ほど汎用性が高いとご紹介しました。2.54mmピッチのICが多いものの、まれにこのピッチではないものが存在します。2.54mmピッチに対応できるのは、いわゆるスルーホール用のICです。スルーホールとは、名前の通り貫通穴に対応したICです。

よくあるのが、表面実装用と呼ばれる足が生えていないタイプのICです。大抵の場合、表面実装用もスルーホール用で、全く同じ機能でラインナップされていることが多いですが、まれにスルーホール用がない場合もあります。
表面実装用は、部品サイズ自体がスルーホール用に比べて極端に小さいので、2.54mmピッチよりも狭い間隔で配線してあげないといけません。
どうしてもこの表面実装用のICが使いたい場合は、ピッチを変換してあげないといけません。例えばこのようなピッチを変更する基板も売られています。こちらを使えばピッチを変換できます。
上記の変換基板を使うことで、2.54mmピッチではないIC(具体的には半分のピッチの1.27mmのIC)を2.54mmピッチに変換することができます。
回路全体のサイズの最適化が難しい。
回路のサイズはどうしてもICのサイズに依存しがちです。また、ICをどこに配置して、どうやって配線を、引き回すかも大きな要因です。
サイズがそもそも大きく、省スペースできないのはピンの足が2.54mmピッチになっているためです。ちょうどテトリスをイメージしてもらえればわかりやすいですね。
ブレッドボードの面積に対してちょっと無理して配置する、なんてことが難しいんですね。ですから、ブレッドボードに載せられる面積をめいいっぱい使えることはほとんどありません。たいてい少し足りなくて2枚目のブレッドボードが必要になったり、ブレッドボード上がガラガラだったりと最適化が難しいのです。
衝撃や振動に弱い。
ブレッドボードに配線するときは、工具不要で差し込むだけです。つまり固定はそこまで期待できません。
ブレッドボードの裏側に入っている金属板を紹介しましたが、この板でジャンパーワイヤーや、ICの足を挟んでいるだけなので、少し強い衝撃や振動が加わると外れてしまいます。
工具無しで取り外しできるメリットとトレードオフの関係ということです。
ユニバーサル基板にはんだ付けする方法
続きまして、ユニバーサル基板にはんだ付けする方法についてご紹介します。
まず、ユニバーサル基板とはこんなものです。見た目は穴だらけの板です。ブレッドボードに少し似ている感じもしますよね。それもそのはず、ユニバーサル基板の穴の位置は、ブレッドボードを同じピッチで2.54mmの穴が空いているのが一般的です。

このような基板のことをユニバーサル基板と呼びます。ブレッドボードよりも、もっと電気工作上級者向けのパーツに見えますよね。ユニバーサルとは、直訳すると普遍的となりますが、わかりにくいので、イメージでお伝えすると万能でしょうか。汎用的である程度の大きさの回路であれば、あまり基板の大きさを気にすることなく搭載することができます。万能ではありますが、専用品には劣るというところは覚えておいたほうがいいことではありますが。
このユニバーサル基板は、いくつか種類があります。材質の差や大きさの違いもありますが、使い勝手に注目すると、両面使えるか片面しか使えないかの差があります。
先ほどのユニバーサル基板には、銀色の導通する箔が、両面の穴、それから穴の中を貫通しています。

それに対して、もう少し安価で簡素なユニバーサル基板では、片面にしか箔が付いておらず、穴の中にも、反対側の穴にも箔が付いていないので導通させることができません。

↑こちら側には銅箔が各穴に載っている。

↑こちらは反対面。銅箔がないことがわかりますね。ここに部品を固定しようとしても銅箔が無いので、はんだ付けできません。
ブレッドボードは先ほどご紹介した通り、ジャンパーワイヤーを挿す側とは反対の裏面に、それぞれ導通させるようなショートバーが入っていました。詳細な仕組みについてはこちらの記事をご覧ください。
この記事では、裏側をめくって実物のショートバーの写真を撮影しています。百聞は一見に如かずということで、ぜひご覧ください。
話をユニバーサル基板に戻します。ブレッドボードに対してユニバーサル基板には先ほど説明したショートバーはありません。つまり、横・縦のつなぎを自分でやらなければいけません。
ユニバーサル基板にはんだ付けするメリット
- 部品がはんだで固定されるため振動・衝撃に強い。
- 表と裏の2面に部品が実装できる。
- 2.54mmピッチのICをそのままはんだ付けできる。
部品がはんだで固定されるため振動・衝撃に強い。
ブレッドボードは、穴にジャンパーワイヤーを差し込むだけでした。つまり、振動や衝撃でワイヤーが抜けてしまうことがあります。それに比べてユニバーサル基板は、はんだ付けして固定するため、振動や衝撃に強いです。
振動や衝撃が加わる可能性がほとんどないなら、あまりメリットに感じないかもしれませんが、モーターや動作する部品や装置の一部として回路を組む場合には、最低でも試作の段階でユニバーサル基板を使うことが多いです。
表と裏の2面に部品が実装できる。
先程紹介した両面に銅箔があるものでなくても、頑張れば表と裏にはんだ付けをすることができます。つまり、両面のスペースを有効活用できるということです。
ブレッドボードの場合は、裏は導電用のアルミの板が入っていますので、片側しか使えません。つまり、見えているブレッドボードの面積しか使えないということです。
表と裏で2倍使えるというのは大きなメリットですよね。もちろん短絡と言って、なにか金属部品に接触して思わぬ事故が発生する確率も上がるのですが…
2.54mmピッチのICをそのままはんだ付けできる。
ユニバーサル基板の多くは、穴の間隔が2.54mmでできています。つまりブレッドボードの穴と同じ感覚ですね。ですから、同じピッチで足が生えているICはそのままはんだ付けして固定できます。
ただし、一度はんだ付けしてしまうと、取り外すのが大変ですので、よくやる方法としては、ICの台座だけはんだ付けしておいて、実際に回路を組んで検証するときだけICをその台座にはめる。というものがあります。
これだと、修正したくなったときのダメージが少なかったり、ICが破損したときの交換が容易だったりするので、現場では結構この手法が使われています。
ユニバーサル基板にはんだ付けするデメリット

- はんだ作業が大変。
- 配線の経路を考える手間が増える。
- ちょうどいいサイズのユニバーサル基板が見つからない場合がある。
ハンダ作業が大変。
はんだ付け作業は、慣れれば簡単。という話ではありますが、ただ、ブレッドボードにジャンパーワイヤーを指すほど簡単にはなりません。熱を加えたり、慎重に作業したりと、ブレッドボードを使うよりも物理的に大変なことが多いです。
配線の経路を考える手間が増える。
ユニバーサル基板に配線を引き回すのは、錫(すず)メッキ線のような、電気を通す針金のようなものを這わせるのが一般的です。
つまり、回路として配線を基板のどこを通すか考える必要があるということです。ブレッドボードとジャンパーワイヤーで回路をつなぐ場合には、ジャンパーワイヤーは空中で交差したところでなんの問題もありません。しかし、針金のような線を空中で交差させると、流れてほしくないところに電気が流れたり、ショートして故障する原因にもなります。
ですから、回路が複雑になって、配線が増えれば増えるほど厄介な手間が増えるということです。
ちょうどいいサイズのユニバーサル基板が見つからない場合がある。
ユニバーサル基板は、ある程度決まったサイズで販売されています。ユニバーサルという名の通り、汎用性があるのがウリなので、あまり特殊な形状のユニバーサル基板は存在しません。
ですから、ちょうどあと2mm短いほうがいい…とか、ああ。5mm長ければちょうどよかったのに…ということは当然起こり得ます。ただ、そこはちょっと大きめのユニバーサル基板を選んで実装するしかありません。
専用基板を実装する方法

専用基板を実装するのは、すこしハードルが上がります。
専用基板とは、先ほどまでご紹介したように汎用性があるタイプとは異なります。
汎用性がないので、言い換えれば専用設計です。所望の動作をさせるために回路設計をして、その動作のみを目的とした基板になります。
回路設計が必要になるのはブレッドボードやユニバーサル基板でも同じですが、1番異なるのが、一度作ったらやり直しが効かないところです。
ブレッドボードがやり直しが1番簡単です。配線の間違いや、整理するときは、さしているジャンパーワイヤーを抜き差しするだけでOKです。
それに対して、専用基板の場合は、ブレッドボードで配線するときのジャンパーワイヤーにあたる部分が固定になります。パターンなんて呼ばれています。基板設計時に配線を基板上に指定していくわけですが、この作業をパターンを引くなんて呼んだりします。
専用基板を実装するメリット
- サイズ、厚さ、色やシルク印刷などカスタマイズが無限。
- ICまで実装して納品してもらうなら、はんだ付け作業が不要。
- 見た目がスッキリして美しい。
サイズ、厚さ、色やシルク印刷などカスタマイズが無限。
無限というと若干言い過ぎな感もありますが、それでもカスタマイズ性は他の2つに比べて段違いです。
例えば、絶縁被膜の色も、一般的には緑が多いですが、その他にも珍しい色を選択できるところがあります。例えば、めったに見ないと思いますが、黒とか、赤とかですかね。赤はたまに見るかもしれませんが、黒なんて珍しいですよね。
また、シルク印刷と言って、基板の表面に、文字や図形を印刷することができます。手書きではみっともないですが、印刷してくれると見栄えも違いますよね。配線ミスの防止にもなります。
ICまで実装して納品してもらうなら、はんだ付け作業が不要。
基板だと、ほとんどの場合、ICやその他の電子部品のはんだ付けは自分でやらないといけない…思いますよね。
ただ、実は専用基板の場合、制作してくれる会社にそのまま部品のはんだ付けまで依頼できます。
つまり、設計して、仕様を伝えて、あとは待つだけですぐに使える基板が手元に届くということ。これ結構すごいですよね。極端な話、設計するためのパソコンがあれば、他にはんだごてやら、細かい電子部品やらを自分で集めて作業する必要がないってことです。
見た目がスッキリして美しい。
ブレッドボードより当然スッキリしていますし、ユニバーサル基板よりもさらにスッキリします。配線が基板の中に埋め込まれているので、線がほとんど邪魔になりません。
また、サイズも専用設計で決められますから、必要最低限のサイズで作れます。
配線が外に出ず、サイズも最小限の大きさとなると、一気にスッキリして美しくなります。
専用基板を実装するデメリット
- 納品まで時間がかかる場合がある。
- 微修正したくなったら作り直し。
- 完全専用設計なので、別のことに流用しにくい。
納品まで時間がかかる場合がある。
専用設計品ですから、その場ですぐに完成するものではありません。ユニバーサル基板の場合ははんだ付け作業が苦でなければご自身でなんとかできるでしょうが、専用基板をつくるとなると、一般のひとが簡単に作れるものではありません。
ですから、基本的には専用基板を作るとなったら、基板制作メーカーに依頼をすることになります。依頼をして納期回答をもらって、という流れなので、当たり前ですがすぐにはモノは完成しません。
また、この手の依頼は、中国にある基板メーカーにお願いするのが最近のスタンダードです。安くて早いので。技術レベルも世界水準ですから、低品質なものが届くなんて心配も最近はないそうです。
微修正だったとしても、修正したくなったら作り直し。
これは電子工作をやっていると地味に痛いデメリットです。
ちょっとココの回路を、こんなかんじで変更したい。抵抗を一部追加したい。とか、ミスったから修正したい。などなど、回路に手を加えたくなることってよくありますよね。
ブレッドボードで回路を作っている場合は、試行錯誤は一瞬ですよね。ジャンパーワイヤーを抜いて違うところに指したりすればいいだけなので。
ユニバーサル基板も、はんだされているところをなんとか外せば、まあ一応修正は可能ですよね。
ただ、専用基板の場合はそうは行きません。専用基板の場合は、配線がパターンとなって基板の中に埋め込まれています。つまり、現物の修正は不可能です。もし修正したいなら、基板の設計からやり直しになります。
設計の変更自体がほんの僅かな時間で終わったとしても、また基板メーカーにお願いして作ってもらわないと行けないので、やはりここでもまた時間がかかってしまいます。
完全専用設計なので、別のことに流用しにくい。
専用基板というだけあって、目的があって基板を作っているはずなので、汎用的なことには流用しにくいです。
一部、拡張性を持たせて、あとからICを載せ替えできるようにしたり、抵抗値を変更できるように工夫したりすることもありますが、ただ、一般的にはある機能に特化させて基板作成することがほとんどなので、流用はしにくいと考えてもらって間違いはないです。
今回のまとめ
今回は電子工作して、回路設計したものを実体にするための3つの代表的な方法をご紹介しました。
手軽さで考えれば、ブレッドボードが最強ですが、振動や動く可能性があるもの、それからある程度見栄えやサイズに制限がある場合にはなかなかブレッドボードは使いにくいです。
回路設計ができてしまえば、あとは自分でユニバーサル基板にはんた付けするか、パターンを引いて専用基板を作ってくれる会社にお願いするかの違いになります。
ユニバーサル基板は作業でカバーできる部分があります。どうしても納期が間に合わない…とかやりながら修正を入れる可能性が高い場合には、ユニバーサル基板に自分ではんだ付けする選択肢もありですね。
専用基板は、その名の通り専用設計するので無駄がない基板が作れます。家電製品の中身を見てもらえばわかりますが、専用基板が入っているはずです。
量産品の場合、ひとつひとつを手ではんだ付けするなんて非効率なことはできません。その点専用設計の基板は自動で作成することが可能なので大量生産に向いています。
一昔前の専用基板は、実は大きな壁がありました。それがコストです。専用基板を作成しようとすると、部品代よりもはるかに高額な準備代金が必要になります。専用基板は大量生産に向いていると説明しましたが、それを可能にしているのが版画のような、版で転写する仕組みです。この仕組みによって大量に安定した品質の基板がつくれます。
ただし、この版を用意するのにまずお金がかかります。どこまでちゃんとやるかにもよりますが、製品として世に出るものに載せる基板としては、初期費用に100万円近くかかることもあります。個人ではこの費用を捻出するのは難しいですよね…