これまでの記事で、電気の「回路」が電気の通り道であること、そして「電圧」「電流」「抵抗」という三つの基本的な性質と、それぞれの「単位」について学んできましたね。これで、目に見えない電気の動きが、少しずつイメージできるようになってきたのではないでしょうか。
今回は、その中でも特に重要な存在である「抵抗(ていこう)」という電子部品に焦点を当てていきましょう。抵抗は、電子回路のほぼ全ての場所に顔を出します。「抵抗がないと回路が作れない」と思ってもらって構いません。しかし、そんなに超大事な部品である抵抗は、その特徴から、存在が当たり前すぎて目立つことはありません。まさに「縁の下の力持ち」と呼べる存在です。
なぜ抵抗がほぼすべての回路に登場するほど重要なのか、どんな種類があるのか、そして回路の中でどんな役割を果たすのか、今回はその秘密をじっくりと探っていきましょう!
抵抗の役割や種類について理解できる。
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1. 抵抗ってどんな部品?「電気の流れを調整する番人」
まず、抵抗という部品の基本的な性質を再確認しましょう。
電気の流れを意図的に制限する部品
前回の記事で、抵抗は「電気の流れを邪魔する(制限する)もの」と学びましたね。まさにその通り、抵抗は電流が流れにくくなるように、意図的に作られた電子部品です。
ここに抵抗を変えたらLEDの明るさがどう変わるかの記事を挿入。
私たちの生活に欠かせない水道の蛇口をイメージしてください。蛇口を少ししか開かないと、水の勢いは弱く、一度に流れる水の量も少なくなります。これは、蛇口が水の流れに対する「抵抗」になっている状態です。電気の世界でも同じように、抵抗は回路に流れる電流の量を調整する役割を担っています。
この「邪魔する度合い」は、前回学んだ単位「オーム(Ω)」で表されます。数値が大きいほど、電気を邪魔する力が大きいため、電流を流れにくくします。
ここで単位の記事。
抵抗器の基本的な見た目
私たちが電子工作で一番よく使う抵抗は、「カーボン抵抗」や「金属皮膜抵抗」と呼ばれるものです。これらは、細長い円筒形をしていて、両端から金属の足が出ています。

写真をよく観察すると、胴体部分には色鮮やかな帯(カラーコード)が何本か描かれていますね。この帯が、その抵抗器の「抵抗値(何Ωか)」を示しています。色と順番によって、抵抗値を示しています。事前にこの組み合わせは覚えておく必要はありますが、一度覚えてしまえば、少し見ただけで抵抗値がわかります。カラーコードの読み方についてはこの記事の後半で詳しく解説していますのでご安心ください。
2. なぜ抵抗がそれほど重要なのか?その役割
抵抗は、回路の中で本当に多くの重要な役割を果たしています。ここでは、抵抗がどんな役割で使用されるかについて4つの具体的な例を使って紹介します。
役割1:電流を「ちょうどいい量」に制限する(電流制限)
これが抵抗の最も基本的で、最も頻繁に使われる役割です。まずはこの役割だけ覚えてください。本当によく使います。
抵抗の計算にはオームの法則がよく使われます。オームの法則と抵抗の関係が理解できれば、同時に電圧、電流、抵抗の関係が理解できます。オームの法則を示しておくとこのようになります。
$$ V[電圧]=R[抵抗値] \times I[電流値]$$
電圧は、抵抗値と電流値の掛け算と等しい。というのがオームの法則です。
ここで少し電子部品の話をします。一般的に、多くの電子部品(特にLEDや一部のICなど)は、流せる電流の量に限界があります。もし、その限界を超える電流が流れてしまうと、部品は過熱してしまい、一瞬で壊れてしまうことがあります。
例えば、LEDを光らせたいとします。LEDは光を出すためにはある程度の電流が必要ですが、電池や電源の電圧をそのままLEDに加えてしまうと、LEDが許容できる電流よりもはるかに多くの電流が流れ込もうとします。ダムの放水で水風船を膨らますイメージをしてみてください。一気に大量の水が、水風船に流れ込み、1秒と持たずに水風船は破裂するはずです。
そこで、LEDに直列に抵抗を挿入します。抵抗が電気の流れを邪魔してくれるおかげで、LEDに流れる電流の量が、壊れない程度の「ちょうどいい量」に制限されるのです。これにより、LEDは安全に、そして適切な明るさで光り続けることができます。
オームの法則をもう一度確認してほしいのですが、電圧が一定ならば、抵抗値を増やすと、電流値が減ります。つまり、電流を流す量をコントロールすることができる。とわかりますね。
役割2:電圧を「おすそ分け」する(分圧)
抵抗を複数、特に2つ以上を直列に繋ぐと、それぞれの抵抗で電圧が分かれる(電圧降下する)という性質があります。この性質を利用して、電源から供給される電圧を、特定の部品に「必要な電圧だけ」を供給するために調整することができます。これを「分圧(ぶんあつ)」と呼びます。

上記は、R1とR2の抵抗で分圧している回路です。R1とR2の抵抗値を上下させることで、丸い点の電圧を調整可能です。電流の量を制限するだけなら抵抗は1つで済みますが、このように複数の抵抗を使うことで電圧をおすそ分けできます。
分圧の計算方法や、仕組みの解説の詳細は別記事にてご紹介します。今回は簡単な例とイメージだけお伝えします。
簡単な具体例としては、例えば、5Vの電源を使って、3.3Vでしか動かせない精密なセンサーを使いたい場合を考えてみましょう。抵抗を2つ直列に繋ぎ、その間にセンサーを接続することで、センサーが受け取る電圧を3.3Vに調整することができます。抵抗の値はR1に1kΩ、R2に2kΩを使用するとちょうど良いです。
$$ 3.3[V]=5[V]\times\frac{2k[Ω]}{1k[Ω]+2k[Ω]}$$
これは、高いところにある貯水槽から低い場所にある家へ水を引く際に、途中で水圧を調整する「減圧弁」のようなイメージです。部品ごとに必要な電圧が異なるため、この分圧の技術は非常に重要になります。ただし、あくまでも高い電圧を下げる役割であり、低い電圧を高くすることはできないことには注意が必要です。
役割3:信号レベルを安定させる(プルアップ・プルダウン)
デジタル回路では、スイッチが押されたか、押されていないか、といった情報を正確に読み取ることが非常に重要です。しかし、スイッチが押されていない状態(開放状態)だと、信号が「High(高い電圧)」なのか「Low(低い電圧)」なのか固定されず不安定になってしまうことがあります。これを「浮いている」とか「フローティング状態」と呼びます。
この不安定な状態を防ぐために使われるのが「プルアップ抵抗」や「プルダウン抵抗」です。浮いた状態を解消する役割なので、論理を確定させる。とも呼んだりします。
- プルアップ抵抗: スイッチが押されていない時に、信号線を電源電圧(High)側に引っ張り上げて(プルアップして)安定させます。スイッチが押されると信号はGND(Low)に落ちます。
- プルダウン抵抗: スイッチが押されていない時に、信号線をGND(Low)側に引っ張り下げて(プルダウンして)安定させます。スイッチが押されると信号は電源電圧(High)に上がります。
プルアップ抵抗とプルダウン抵抗は、電源のそばにつけるか、GNDのそばにつけるかで役割が変わります。とりあえず付けるのではなく、しっかりと役割について理解して使いましょう。
このように抵抗は、デジタル信号が正しく読み取られるように、信号レベルを「あるべき状態」に固定する役割も担っています。これも地味ながら非常に重要な役割です。
プルアップ・プルダウンについては、例も含めて詳細に解説すると長くなるため、別記事で紹介しています。
役割4:センサーと組み合わせて変化を読み取る
抵抗の中には、周囲の状況によって抵抗値が変化する「可変抵抗」と呼ばれるものがあります。これらは、センサーとして非常に多くの場面で活用されています。
- ボリューム(可変抵抗器): ツマミを回すと抵抗値が変化し、これを利用して音の大きさを変えたり、LEDの明るさを無段階に調整したりすることができます。

- CDSセル(光センサー): 明るさによって抵抗値が変化します。暗くなると抵抗値が上がり、明るくなると抵抗値が下がります。これを利用して、暗くなると自動的にライトが点灯する回路などを作ることができます。
CDSセルの写真

- サーミスタ(温度センサー): 温度によって抵抗値が変化します。温度が上がると抵抗値が下がるタイプ(NTCサーミスタ)が一般的です。これを利用して、一定の温度になるとファンが回る回路などを作ることができます。
DHT11の写真

※誤解のないように解説しておくと、こちらの写真のDHT11はサーミスタ本体ではないですが、内部にサーミスタを内蔵している温度測定モジュールです。
このように、抵抗は単に電流を制限するだけでなく、外部の変化を電気信号に変換する「目」や「耳」のような役割も果たしているのです。
3. 抵抗の種類と特徴
「抵抗」と一口に言っても、実はさまざまな種類があります。用途や性能によって使い分けられるのですが、ここでは電子工作の初心者がよく出会う代表的な抵抗器の種類をご紹介します。
種類1:固定抵抗器(カーボン抵抗、金属皮膜抵抗など)
最も一般的で、一度取り付けたら抵抗値が変わらないタイプの抵抗器です。回路図で単に「抵抗」と書かれている場合は、ほとんどがこの固定抵抗器を指します。
- カーボン抵抗:
- 特徴: 炭素の膜を使って作られており、最も安価で広く使われています。
- 見た目: 茶色っぽいボディにカラーコードが巻かれていることが多いです。
- 利点: コストが非常に低い。汎用性が高い。
- 欠点: 抵抗値の精度は比較的低め(±5%など)。温度変化や経年劣化で抵抗値が少し変動することがあります。
- 用途: ほとんどの一般的な電子回路。LEDの電流制限など、そこまで厳密な精度が求められない場所。
- 金属皮膜抵抗:通称きんぴ
- 特徴: 金属の薄膜を使って作られており、カーボン抵抗よりも高精度です。
- 見た目: 青っぽいボディにカラーコードが巻かれていることが多いです。
- 利点: 高精度(±1%など)。温度特性が優れている(温度による抵抗値の変化が少ない)。ノイズに強い。
- 欠点: カーボン抵抗よりは少し高価。
- 用途: 精密な測定回路、オーディオ回路など、高い精度や安定性が求められる場所。
- 酸化金属皮膜抵抗:
- 特徴: 酸化金属の皮膜を利用しており、金属皮膜抵抗よりもさらに高出力に対応できます。
- 利点: 大電力に対応できる。高熱に強い。
- 用途: 電源回路など、比較的大きな電流が流れる場所。
- セメント抵抗:
- 特徴: セメント(セラミック)で覆われた、箱型で白い見た目の抵抗器です。非常に大きな電力を扱えるのが特徴です。
- 利点: 発熱しても大丈夫なように作られており、大電流が流れる場所で使われます。
- 欠点: 大きい。
- 用途: 電源回路、モーター駆動回路など、発熱量が大きい場所。
種類2:可変抵抗器(ボリューム、トリマなど)
その名の通り、抵抗値を自由に変えることができる抵抗器です。ツマミやネジを回して抵抗値を調整します。
- ボリューム(可変抵抗器):
- 特徴: ツマミを回すことで抵抗値を連続的に変化させることができます。ツマミの形は様々です。
- 用途: オーディオ機器の音量調節、LEDの明るさ調節、モーターの速度調節など、人間が直接操作して値を変更したい場面。
- 種類: 線形(抵抗値の変化が一定)と対数(音量調整など、人間の耳の感覚に合わせた変化)があります。
- トリマ抵抗(半固定抵抗器):
- 特徴: 小さなネジ回しなどで抵抗値を調整するタイプの可変抵抗器です。一度設定したら、頻繁には変更しない場所に設置されます。
- 用途: 回路の初期設定値の微調整、センサー感度の微調整など。回路基板に直接はんだ付けして使われることが多いです。
種類3:チップ抵抗(表面実装部品、SMD)
最近の小型化された電子機器のほとんどで使われているのが、この「チップ抵抗」です。
- 特徴: 非常に小さく、鉛筆の芯の破片のような形をしています。基板の表面に直接はんだ付けして使います(表面実装)。
- 利点: 省スペースで小型化できる。大量生産に向いている。
- 欠点: サイズが小さいため、手ではんだ付けするのが難しい場合がある(特に初心者には)。カラーコードではなく、数字で抵抗値が書かれているため、読み方が異なる。
- 用途: スマートフォン、パソコン、家電製品など、小型化が求められるあらゆる電子機器。
電子部品を取り扱っているメーカーを確認してもらえばわかるのですが、現在市場に流通している抵抗のほとんどがこの表面実装のチップ抵抗です。先程の固定抵抗器よりも、なぜ表面実装がのチップ抵抗が流通しているのか?理由は簡単です。小さくて安いからです。
4. 抵抗値の読み方:カラーコードをマスターしよう!
私たちが手にする機会が多い、リード線付きの固定抵抗器には、抵抗値が直接数字で書かれていることは稀です。その代わりに、色で抵抗値を表す「カラーコード」という方法が使われています。これは、小さな抵抗器でも値が判別できるようにするための工夫です。
最初は覚えるのが少し大変かもしれませんが、一度覚えてしまえば、どんな抵抗器の抵抗値でも読み取れるようになりますよ!
カラーコードの基本:4本帯と5本帯
抵抗器には、主に4本帯と5本帯のカラーコードがあります。
- 4本帯抵抗: 一般的によく使われます。
- 第1帯:1桁目の数字
- 第2帯:2桁目の数字
- 第3帯:乗数(10の何乗をかけるか)
- 第4帯:許容差(誤差の範囲)
- 5本帯抵抗: 高精度な抵抗器に使われます。
- 第1帯:1桁目の数字
- 第2帯:2桁目の数字
- 第3帯:3桁目の数字
- 第4帯:乗数
- 第5帯:許容差
カラーコードの覚え方(語呂合わせ)
各色が表す数字と乗数を覚えるには、語呂合わせが便利です。
| 色 | 数字 | 乗数 (10の何乗) | 許容差 | 語呂合わせ |
| 黒 | 0 | 10^0 (=1) | – | 黒い礼(0)服 |
| 茶 | 1 | 10^1 (=10) | ±1% | 小林一茶 |
| 赤 | 2 | 10^2 (=100) | ±2% | 赤いニ(2)ンジン |
| 橙 | 3 | 10^3 (=1,000) | – | 第(橙)三者 |
| 黄 | 4 | 10^4 (=10,000) | – | 四季(黄)の色 |
| 緑 | 5 | 10^5 (=100,000) | ±0.5% | 緑はGO(5) |
| 青 | 6 | 10^6 (=1,000,000) | ±0.25% | 青二才のろくでなし |
| 紫 | 7 | 10^7 (=10,000,000) | ±0.1% | 紫式部 |
| 灰 | 8 | 10^8 (=100,000,000) | – | ハイヤー |
| 白 | 9 | 10^9 (=1,000,000,000) | – | ホワイトク(9)リスマス |
| 金 | – | 10^(−1) (=0.1) | ±5% | |
| 銀 | – | 10^(−2) (=0.01) | ±10% |
読み方の手順
- 許容差帯(通常、金や銀)を右端に置く: 抵抗器の帯はどちら側から読めばいいのか迷うことがありますが、通常、金や銀の帯は許容差を示すもので、これが一番端(右端)に来るように持ちます。もし許容差帯がない場合は、端から少し離れている帯や、幅が広い帯が許容差帯であることが多いです。
- 数字の帯を読む: 左から順に、第1帯、第2帯(5本帯なら第3帯も)の色が表す数字を読み取ります。
- 乗数帯を読む: 次の帯が表す乗数を読み取り、手順2で得られた数字にかけ算します。
- 許容差帯を読む: 最後の帯が表す許容差(誤差)を読み取ります。
例1:茶 赤 橙 金 の4本帯抵抗を読んでみよう!
- 茶 (1)
- 赤 (2)
- 橙 (乗数 10^3=1000)
- 金 (許容差 ±5%)
数字は「12」に、乗数は「1000」をかけるので…
12×1000=12000Ω
これをキロオームに直すと 12kΩ です。
許容差は ±5% なので、この抵抗器の抵抗値は 12kΩ±5% ということになります。
例2:青 灰 茶 赤 茶 の5本帯抵抗を読んでみよう!
- 青 (6)
- 灰 (8)
- 茶 (1)
- 赤 (乗数 10^2=100)
- 茶 (許容差 ±1%)
数字は「681」に、乗数は「100」をかけるので…
681×100=68100Ω
これをキロオームに直すと 68.1kΩ です。
許容差は ±1% なので、この抵抗器の抵抗値は 68.1kΩ±1% ということになります。
最初は少し戸惑うかもしれませんが、何度か練習すればすぐに慣れます。スマートフォンのアプリやウェブサイトでカラーコードの読み取りツールもあるので、最初はそれらを活用するのも良いでしょう。
5. 抵抗の選び方と注意点
ここまで抵抗の性質や使い方について学びましたが、きっとあなたが知りたいのは、
「結局のところ抵抗値はどの順序で選べばいいの?」ということだと思います。ここについても詳細を解説します。
1. 抵抗値(Ω)を選ぶ
これは、回路の設計で最も重要な要素です。オームの法則を使って、目的の電流値や電圧降下を実現するために必要な抵抗値を計算します。例えばLEDの電流制限抵抗を計算してみましょう。
- 使用する電源の電圧:$V$
- 電源使用するLEDの順方向電圧(VF):$V_{LED}$ (データシートで確認。赤色LEDなら約2V)
- LEDに流したい電流:$I_{LED}$ (データシートで確認。通常10mA〜20mA)
抵抗にかかる電圧は $\quad V_R=V_{電源}−V_{LED}\quad$抵抗値はオームの法則 $R=\dfrac{V}{I} \quad$より $\quad R=\dfrac{V_R}{I_{LED}} \quad$
例えば、5V電源を使って、$V_{LED}=2V$のLEDに20mA(=0.02A)流したい場合
$V_R=5V−2V=3V_R=\dfrac {3V}{0.02A}=150Ω$この場合、150Ωの抵抗を選べばOKです。
もし計算した値と全く同じ抵抗値のものが手元になければ、計算値より少し大きめの抵抗値を選ぶのが安全です。抵抗値が少し大きい分には電流が少し減ってLEDが暗くなる程度で済みますが、抵抗値が小さすぎると電流が流れすぎてLEDが壊れてしまいます。
2. 許容電力(ワット:W)を選ぶ
抵抗には、流れる電流によって熱が発生します。この熱に耐えられる能力を「許容電力(きょよう でんりょく)」と呼び、単位は「ワット(W)」で表されます。電子工作の簡単なものでは、電圧も5Vや3.3Vと低いため、あまり気にしなくても大丈夫なことがほとんどです。ただし、抵抗器が熱に耐えきれないと、焦げ付いたり、最悪の場合発火したりする危険があります。
許容電力は、以下の式で計算できます。
$P=V \times{I} \qquad P=I^2 \times R \qquad P=\dfrac{V^2}{R}$
- P:消費電力(ワット:W)
- V:抵抗にかかる電圧(ボルト:V)
- I:抵抗に流れる電流(アンペア:A)
- R:抵抗値(オーム:Ω)
先ほどのLEDの例(3Vの電圧が抵抗にかかり、0.02Aの電流が流れる150Ωの抵抗)で計算してみましょう。
$P=3V \times 0.02A=0.06W$
または
$P=(0.02A)2 \times 150Ω=0.0004 \times 150=0.06W$
一般的に、電子工作でよく使うカーボン抵抗や金属皮膜抵抗は「1/4W(0.25W)」のものが多く、0.06Wであれば余裕で対応できます。しかし、モーター駆動回路や電源回路など、大きな電流が流れる場所では、1Wや2W、あるいはセメント抵抗のようなさらに大きな許容電力の抵抗を選ぶ必要があります。
3. 抵抗器の選び方のまとめ
- 必要な抵抗値(Ω)を計算する。
- その抵抗値で消費される電力がどのくらいか(W)を計算する。
- 計算した消費電力よりも十分に余裕のある許容電力の抵抗器を選ぶ。
- 必要に応じて、精度(許容差)や温度特性(金属皮膜抵抗など)を考慮する。
6. 抵抗を使いこなして回路を組んでみよう!
これで、抵抗の基本的な知識はバッチリですね!
抵抗は、まるで料理の塩コショウのように、適量を加えることで回路の味(動作)を最適なものにしてくれます。多すぎても少なすぎても、回路は期待通りに動きません。
- 最初のステップとして:
- LEDを光らせるための電流制限抵抗を計算し、実際にブレッドボードで光らせてみましょう。
- ボリューム(可変抵抗器)を使ってLEDの明るさを変える回路を組んでみましょう。ツマミを回すだけで明るさが変わる様子は、きっと感動しますよ!
- CDSセル(光センサー)と抵抗を組み合わせた「分圧回路」を使って、明るさに応じて変化する電圧をテスターで測ってみるのも面白いでしょう。
実際に手を動かし、計算した抵抗値を使い、テスターで電流や電圧を確認する経験を重ねることで、抵抗の役割がより深く理解できるようになります。
まとめ:「電子部品の王様」抵抗は回路の安全と安定を司る
今回の記事では、「電子部品の王様」とも呼べる抵抗について、その多様な種類とそれぞれの重要な役割、そして具体的な抵抗値の読み方や選び方まで、詳しく解説しました。
- 抵抗の役割:
- 電流を制限し、部品を保護する。
- 電圧を調整し、部品に適切な電圧を供給する(分圧)。
- 信号レベルを安定させる(プルアップ/プルダウン)。
- センサーと組み合わせて、外部の変化を電気信号として読み取る。
- 抵抗の種類:
- 固定抵抗器(カーボン、金属皮膜、酸化金属、セメントなど)
- 可変抵抗器(ボリューム、トリマ)
- チップ抵抗(表面実装部品)
- 抵抗値の読み方: カラーコード(4本帯、5本帯)で抵抗値を読み取る。
- 抵抗の選び方: 抵抗値だけでなく、許容電力(ワット:W)も考慮して選ぶことが非常に重要。
抵抗は、単に電気の流れを「邪魔する」だけでなく、私たちの意図通りに電気の流れを「コントロールする」ための、なくてはならない存在です。この小さな部品が、電子回路の安全と安定動作を支えているのです。
この「抵抗の王様」の知識を身につけたあなたは、きっと電子工作の次のステップへ力強く踏み出せるはずです。次回は、電気を貯めることができる魔法の部品「コンデンサ」について学んでいきましょう。お楽しみに!





